毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「ああ、まあ……そうですね。信長様なら、毬亜様の気分を害すような話は一切しませんから」

「でしょ? それを敢えて私に話してくれるの、信包様は」

「毬亜様のご気分を害しに? わかってて話すなんて、それこそ酷い男だわ」

「違うわ。前もって知らせておいてくれるのよ。彼なりに私に必要だと思う情報を、厳選してね。私が困らないように」

 私は小夜ににっこりと笑った。

「よく……意味がわかりませんが。毬亜様はそうおっしゃるなら」

「信長様は堂々と私に守ると断言してくれました。信包様も、陰ながら私を守ってくれてるんです。私は織田氏に拾われて、本当に良かった」

 私は立ち上がると、草履も履かずに土の上に足をつけた。

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