毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―

「それはいつかしら？　今川義元との戦が終わってから……ということになるのかしら？　『勝利の鍵』と言われているよね。戦が終われば、あなたは用無しになるの？」

「条件さえそろえば。私はいつでも去る準備はできています」

「条件とは？」

「信長様が用意してくださいますので」

　濃姫の眉がぴくっと動いた。

　今川義元のところにいる術師が織田側にくれば、私は元の時代に帰れるはず。

　必ず信長が、術師を連れて来てくれるって私は信じてる。

「信長様次第ってことね」

「そう、ですね」

　濃姫の瞳があまりにも鋭くて、私の背筋がひんやりした。

　信長は、私を元の時代に帰そうと努力している。勘違いしないで欲しい。