彼女は予想の斜め上を行く
だけど実際は……。

大会最終日目前にしても現れないし。

あいつのことだから、ヤケになったか情に流されてヨリを戻したであろう元カノともよろしくやってるみたいだし。

だから定番になりつつある俺の言葉は。

「気休めは、いいよ……」

葵の言う通り気休めでしかないのかもしれない。



「じゃあ明日も頑張ろうな?」

居酒屋から宿泊先のホテルに戻り、向かい合わせの部屋に入ろうとしたけど。

「うん…。おやすみ……」

意気消沈したような返事をした切なそうな葵の背中を見たら。

「……裕行?」

溜まりに溜まった想いが溢れ出して。

「……どうしたの?」

背後から華奢な葵を抱き締めている自分がいた。



あいつなんてやめて俺のとこ戻ってこいよ。俺だったら葵に辛い想いさせない。俺のが絶対幸せに出来る。
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