彼女は予想の斜め上を行く
「そうしてやるよ!そもそも気の強い女好きじゃないし?」

「あたしだって、あんたみたいな無駄に爽やかな男より長野君みたいなイケメン上品ボーイがいいわよ!」

「だったら、勇人と付き合えば?」

「そうするわよ!明日だって、あんたじゃなくて長野君と行くわよ」

なんだか俺を徐々に巻き込みながら、話はおかしな方向へ向かいだしてきた。

そしてそれを察知した時には、もう完璧に巻き込まれていた。

「長野君。行こ!」

野球の為だけに俺の車に乗ったあの日のように。

彼女は俺の手を掴み立ち上がった。

「かっ、金本さん!?」

無理矢理立ち上がらせ襖の前までズンズン前進したかと思えば、何かを思い出したようにピタッと立ち止まった。

真後ろにいる俺を通り越して、先輩を睨み付ける。

「全額、裕行持ちだからね!彩、塩っち。お疲れ」

「わかってる!」

もはや完璧でも大人のイイ男でもないただの男が、こちらを睨み付けて来る。

特に、金本さんに掴まれている俺の手への視線が痛い。
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