社長と秘密の生活
「そうか……」
要が大きなため息を吐いた。
「あっ!!」
「何、どうした?」
「名前教えちゃったの…」
「はっ!?」
要の顔色が変わり、鋭い眼差しを向けて来た。
「だけど聞かれると思ってなくて、咄嗟に“佐久間杏花”って答えちゃったから」
「一条の名を出して無いんだな?」
「うん、出して無い」
「ふぅ~、そうか。とりあえずは良かったっぽいな?」
大きくため息を吐いて、ほんの少し笑みを零した。
「………」
どうしよう、こんなに慌てるだなんて…
思っても見なかったし……。
「“一条”の名前は口にするな?」
「うん……」
私…やっぱり、マンション出ちゃダメだったんだよ。
要に迷惑掛けちゃった。