社長と秘密の生活



「……うん。まだ秘密にしておくから安心して?」

「悪いな……」

「大丈夫」


杏花は微笑んで答えた。

俺は心の中で“すまない”と何度も謝った。

杏花の優しさについ、甘えてしまう。


本当であれば、籍を入れる前に挨拶に伺うべきだし。

俺は夫としてすべき事を何もしてやれない。

行き場のない気持ちが俺を責め立てる。


普通のサラリーマンと結婚してたら、

こんな生活を送らずに済んだのに。



杏花……本当に……ごめん。


俺は気持ちを切り替えようと

シャワーを浴びることにした。



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