君とあたしの距離、50㍍。
いつも手抜きのトーストパン
だけだったから、少しだけでも
手の込んでいるフレンチトーストは、
あたしにとって首を傾げる一番の
理由だった。
「お母さん、何で今日はフレンチトーストなの?珍しいねえ」
「え?だってまゆり、フレンチトースト好きでしょ?新学期頑張ってほしいし…。まあ、期待を込めて、ねッ」
お母さんは、やさしく
微笑みながらウインクをする。
ああ、いつもこうならいいのに。
あたしはひとつ、ため息をついた。