pinky
馬鹿な男。



「まぁまぁ落ち着いて奏っ。こんなことはこの世界日常茶飯事なんだし、いちいち目くじらたてるようなことでもないよ?
もうこの世界入って5年は経つでしょ?いい加減慣れなよ・・」



マネージャーである作田の言葉にいらだちを覚えて、あたしは楽屋のドアを蹴り開けた。


少々乱暴さが目立つのは表では内緒。
大人に尻込みしてたら売れるもんも売れないって言うしね。
別に表に公開したっていいんだけど、社長命令だから言うこと聞かないわけにもいかなくて。



楽屋のソファーにドサッと身を投げて作田を睨む。



「ああいうことは作田の管轄でしょ?社長さんにも言われたじゃん、制限してくれって。あたしだってその気だからね。後は作田次第なんだからしっかりしてよ」


「でも・・・大御所さんには逆らえないよ・・・」



作田は気が小さい。
まさにあたしとは逆の性格。
心配性で怖がり。

だけどあたしは作田が好きだし社長さんも作田とのミスマッチが気に入ってるみたいだから、作田がどんな失敗しても笑って許してきた。



だけど!


今回のことは許せる範囲じゃない。



あたしは歌手です。
グラビアアイドルなんかじゃありません。
ましてや脱がなきゃ売れない三流アイドルでもない。

歌うのが仕事の人間が、歌わないで服を脱ぎ棄ててどうするよ。


今度出演するテレビ番組のプロデューサーが打ち合わせで放った一言が、完全にあたしをキレさせたんだ。



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