pinky
『うちの番組、最近視聴率が低迷気味でね~、困ったもんなんだよ。どう?奏ちゃんがひと肌脱いでくれたら、数字とれると思うんだけどね~』


『ほんとですか?w何をすれば?』


『言葉のとおりだよ。ちょっと脱いでくれたらいいんじゃないかなと思ってさ。やってくれる気ない?』



事務所があれだけ肌見せ拒否だって言ってるのに、会話の流れであたしにOKさせるつもりみたいで、にやにやしながらセクハラまがいの言葉をかけてきた。



どいつもこいつも女とみたら脱がせようとしやがってこんにゃろ~。
馬鹿にしてんのか。
深夜枠だからって調子こいてんじゃねぇよ。


っていうか!!
あたしが必死に断ってる最中、隣りで作田はずっと立ちっぱなしでフォローのひとつもしようとしない!!

最初に「うちの奏は肌見せは事務所が認可してないので厳禁です」って、厳しく言っておけばよかった話だろ。


おおかた目の前に大御所タレントがいたからいつものごとく尻込みして何も言えなかったんだ。


なんであたしがこんな必死になって断ってんの。



「作田の仕事だろっ!!!!」



収録終わって楽屋で怒鳴ったら作田は情けなさそうに言い返してきた。


「今回はプロデューサーも本気ではなかったようだし・・・冗談ならいいじゃない、冗談なら・・」



「冗談じゃなく水着着させられたら社長にクビ切られる前にあたしが半殺しにしてるよ」



「ひっ・・・・それだけは勘弁っ!」



「だったら今度からちゃんと自分の仕事してよねっ」



あーもぉーイライラするっ。



なんなの、あいつ。



作田に自宅前まで送ってもらってやっと帰宅したのは、午後7時頃だった。

エレベーターに乗って17階昇り、鍵を開けて部屋に入った。



「葵ーっ、ただいまー。・・・ん?」



葵が一人でいる時は防犯のため部屋の鍵を開けさせない。
なのになぜか玄関に、男物の靴が一組。


「大胆にこの部屋で浮気ですか・・・」


呟いて中に入る。
見学でもしようかな、といった面持ちで。










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