抹茶な風に誘われて。~番外編集~
「……ったく。なんであたしがあんなヤツに。しかもバレンタインチョコなんて渡さなきゃいけないんだか」
正確にはチョコクッキーだけど、と頭の中でなぜか言い訳めいたことを付け加えつつ、あたしは足を速めた。言葉とは裏腹に先ほどまで下がっていた肩が上がり、頬には面白がるような笑みが浮かんでいたことには――気づかないふりをして。
『ホストクラブ、ムーンリバー』と書かれた白いプレートを確認して、ビルの入り口から地下へつながる階段を見下ろした。ゴールドの派手なドアがすぐさま見えて、もちろんここが目的の店だってこともわかる。
けれど、さすがのあたしでも制服姿で堂々と入っていくにはためらわれる。それぐらいの常識は持ち合わせているのだ。
――どっかで着替えて、出直すか?
この辺をうろついててもおかしくはない服を買ってくるぐらいのお金なら、財布に入ってる。でもよりによってあんな万年最下位ホストのためにわざわざそこまでするのもバカらしくて、あたしは鼻で笑った。
「別に店に出入りするわけじゃないんだし、いっか」
一人で呟いて、階段へ足を踏み出そうとする。それでもまだ残っていたためらいに自分でも驚いて、そうだ、と裏口を探すことにした。
どんな店にだってゴミ捨てやなんかのために、裏口があるはず。そこで誰かに聞いて、あのバカ男を呼び出してもらえば。
――って、なんかそれって告白みたいじゃない?
いやいやいや、ありえないし。まさかあいつだってあたしに呼ばれたからって、そうは思わないはず。
――でも今日は……バレンタインだし。
いっつも能天気で、自分に都合のいい受け取り方ばっかりして、バカ丸出しのあいつなら、もしかしてもしかするとそういう勘違いをしないともいえないじゃん?
「って何心配してんのあたし。そんな勘違いしやがったら……それこそバーカって笑ってやればいいだけだって」
そうだ、ただ友達に頼まれたチョコを渡すだけ。しかも友情の義理チョコなんだから、何もこんなに気を使う必要なんてないのだ。
正確にはチョコクッキーだけど、と頭の中でなぜか言い訳めいたことを付け加えつつ、あたしは足を速めた。言葉とは裏腹に先ほどまで下がっていた肩が上がり、頬には面白がるような笑みが浮かんでいたことには――気づかないふりをして。
『ホストクラブ、ムーンリバー』と書かれた白いプレートを確認して、ビルの入り口から地下へつながる階段を見下ろした。ゴールドの派手なドアがすぐさま見えて、もちろんここが目的の店だってこともわかる。
けれど、さすがのあたしでも制服姿で堂々と入っていくにはためらわれる。それぐらいの常識は持ち合わせているのだ。
――どっかで着替えて、出直すか?
この辺をうろついててもおかしくはない服を買ってくるぐらいのお金なら、財布に入ってる。でもよりによってあんな万年最下位ホストのためにわざわざそこまでするのもバカらしくて、あたしは鼻で笑った。
「別に店に出入りするわけじゃないんだし、いっか」
一人で呟いて、階段へ足を踏み出そうとする。それでもまだ残っていたためらいに自分でも驚いて、そうだ、と裏口を探すことにした。
どんな店にだってゴミ捨てやなんかのために、裏口があるはず。そこで誰かに聞いて、あのバカ男を呼び出してもらえば。
――って、なんかそれって告白みたいじゃない?
いやいやいや、ありえないし。まさかあいつだってあたしに呼ばれたからって、そうは思わないはず。
――でも今日は……バレンタインだし。
いっつも能天気で、自分に都合のいい受け取り方ばっかりして、バカ丸出しのあいつなら、もしかしてもしかするとそういう勘違いをしないともいえないじゃん?
「って何心配してんのあたし。そんな勘違いしやがったら……それこそバーカって笑ってやればいいだけだって」
そうだ、ただ友達に頼まれたチョコを渡すだけ。しかも友情の義理チョコなんだから、何もこんなに気を使う必要なんてないのだ。