抹茶な風に誘われて。~番外編集~
 目の前の女とあたしを何度か見比べて、なぜかものすごく混乱したような表情を浮かべていた亀元に呼ばれる。でも、走り出してしまったあたしの足は、簡単には止まらなかった。

「いいじゃん、そんなガキ。ほっときなさいよお」と膨れた声が言うのと、「まーた勝手に――勘弁してくれよローザさんっ」なんてひどく情けない声が答えるのと――耳に届いてきたやりとりは真っ白になった頭には入ってこなくて。

 ――真っ白? 

 なんであたし、こんなに動揺してんの?

 あんなダメダメホストが誰とキスしてようが、何だろうが――どうでもいいはずなのに。別にあんなヤツ、何とも思ってないのに。

 どうしてこんなに……ショック受けてんのよ。

 自分の心と行動が理解できなくて、わけがわからないまま滅茶苦茶に走る。走って走って気が付いた時には――入り組んだ路地の、つきあたりに来ていた。

 弾む息を整えるためにようやく立ち止まって、そのままずるずると座り込む。飲食店もあった先ほどの場所とは違って、もうこの辺りにはあやしげな店しかない。

 酔っ払ったオヤジたちと、いかにも商売な女たちが腕を組んだり、時にはもっと密着して通り過ぎていく。その場違いすぎる光景をぼんやり眺めながら、やっと呟いた。

「帰らなきゃ……」

 こんなところにいたら、さすがに危ない。しかも無防備な制服姿では、本当に――。

 そう思った次の瞬間、別の制服姿の男二人組と目が合った。

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