抹茶な風に誘われて。~番外編集~
 すう、と息を吸うなり始まったのは、警察官をも圧倒させるようなマシンガントーク。

 畳み掛けるようにそう言われて、一人は呆然としているのに、もう一人の警察官はあわや頷きそうになるところを、あわててした咳払いでごまかしたりして。ぷっと吹き出しそうになるのを、必死でこらえるあたし。

「あーおまわりさんもそういうクチ? でももしツンデレ系の妹がお好みだったらーうちのも結構オススメっすよ。下僕的扱いでもいいっなーんて萌えられるドMさんには最適かも。どうっすか? 一度貸し出ししましょうかー?」

 もちろん、超お買い得価格で、なんてハートマークでも付けそうな勢いで付け足した亀元に唖然としてから、真っ赤な顔になった警察官が唾を飛ばして叫んだ。

「なっ、何てことを言っとるんだ、君は! そういうけしからんことを――」

 もちろん、その言葉は最後まで続かない。このあたしが続けさせるわけがないのだから。

「何をふざけたこと抜かしてんのよ、このっ、変態ホスト!」

 思いっきり足蹴にしたあたしに「ぐえっ」と潰れたカエルのような声でうめいて、「ひでーよー優月―」とそれでも演技を続ける亀元。

 思わず笑いそうになるのをなんとか堪えて、あたしも乗ってやることにした。

「このあたしを妹にできてる幸運に感謝しなさいよねっ、万年ダメダメ兄貴が!」

 萌えだか二次元だか何だか知らないけど、あたしの台詞はすごくツボだったようで――嬉しそうにゆがんだ頬を必死で引き締めた警察官と、困った顔のもう一人とにあきれたように手を振られ、「さっさと行きなさい。兄弟とはいっても、こんなところであまりウロウロするもんじゃないぞ」と送り出される。

 特に夜は、危ないんだからな――最後に付け足された一言に頷くと、ついでのように差し出された手。シルバーの指輪をはめたその手をつい取ったら、しっかりつないだまま駅前通りまで歩くはめになってしまった。

 少し先を歩く亀元の顔が真顔なもんだから、あたしまでなぜか何も言えなくなって――妙に緊張したまま、ひたすらスーツの背中に付いていったのだった。
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