ハレゾラ

何度も何度も頭の中でシュミレーションを重ねた。失敗は許されない。
成功あるのみっ!
手で握り拳を作り、よしっと力を込める。

次の角を右折すれば、すぐに私の住んでいるアパートがある。ここからは用心
深く行かなければならない。
他人から見れば明らかに挙動人物と思われてしまうような動きで、少しづつ前に
進んでいき、曲がり角までたどり着いた。
向かいの家の壁に手を当て少しだけ腰を屈めると、角から顔を少しだけ出して
コソッと覗いてみる。

(誰もいない……?)

自分のアパートを通り越した向こう側まで見てみたが、人影はなさそうだった。
ふぅ~と安堵の息を吐き背筋をピンと伸ばすと、腰に痛みが走った。


「痛っ……」


その痛みに集中力を完全に奪われ、人の気配を感じ取ることが出来なかった。
背後から低い声で呼びかけられる。
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