ハレゾラ

叩かれた私より、彼の心のほうが傷ついている? そう思ったら、今すぐに彼を
抱きしめたくなってしまった。
そっと手を伸ばし、彼のやわらかい髪に手を差し入れ包みこむと、それを自分の
胸にへと導き入れる。

30過ぎだと歳に事ばかり気にしているのに、実際は彼に甘え助けてもらってば
かりだった。
でも今、はっきりと気づいた。歳は関係なく、私はもっと強くならないといけな
いって。そして私も彼を守ってあげたい、助けたいって……。


「ねえ咲さん。僕の事、嫌い?」

「何言ってるのっ!! そんなことある訳……」

「だったら好き?」

「当たり前でしょ!! 大好きだよ……」

「だったら、それでいいよね? お互いに大好きってことだけで、僕達はこの先
 ずっと一緒だ」


私の胸から顔を上げ、少し赤くなった目で私を見つめると、そっと唇を重ねる。
ほんの数秒しか重なっていなかったのに、それだけで私の心は満たされてしまっ
た。
でも身体は正直みたい。
まだ満たされていないのか、彼から離れようとしなかった。
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