ハレゾラ
「じゃあ出発するよ。俺のお気に入りの店、予約しておいたんだ。居酒屋っぽい所だから大丈夫だと思うけど、咲さん好き嫌いある? あっ、お酒は飲めるよね?」
「好き嫌いもないし、お酒も大好き。楽しみだよ、ありがとう」
笑顔でそう答えながら、彼の左手を無意識にギュッと握ってしまう。
彼がピクッと僅かに反応する。それからしばらく車内はしんとしてしまった。
そして少したってから、彼があっと思いたったように口を開く。
「軽く自己紹介しておくね。いつまでも名前の分からない男と一緒にいるのは嫌だと思うし。僕の名前は、野口翔平、25歳」
「25歳!?」
やっぱり……。私より8つも下だよ。分かっていた事とは言え、ちょっとショック大きいかも。
自分の年齢、言うの嫌だなぁ。