ハレゾラ
優しくチュッと唇が重なる。一度離れた唇が、今度は私の気持ちを確かめる
ように長く口づけてきた。
それに答えるように少しだけ唇に隙間を開けると、彼の柔らかい舌がスルッと
入り込んでくる。


「……んっ……」


その時どちらともなく甘い吐息がこぼれた。

ゆっくりとした動きで私の前歯や歯茎をなぞったかと思うと、何かを探るよう
に奥深くまで入り込んできた。あまりの気持ち良さに身体から力が抜けていく。
彼の舌先が私の舌を見つけると、少し遠慮気味に絡ませてくる。私も自然に
絡めせていた。


「っ……ふぁ……」


キスだけでこんなに感じるなんて、この年になるまで知らなかった……。
ううん、知らなかったんじゃない。相手が彼だから、こんなにも感じるんだ。
そのまま彼に身を委ねていると、ぱっと唇を離した。


「う~~~ん、咲さん、ごめん。今日はここまでにしておく」


急に私の肩を掴んで顔を離したかと思うと、彼は一生懸命何かと戦っているか
のような顔をして俯いた。
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