雫-シズク-
あんまり辛そうだからやっぱり聞かない方がいいかもしれないと思ったけど、僕がそう迷っている間に佐藤さんが話し始める。


「詳しくはわからないけど、お父さんは心の病気だったみたい。あとは圭介くんのお父さんとお母さんにしかわからないわ。……ごめんね」


急に僕はこの狭苦しい場所からいなくなりたくなった。


今すぐここを出ていきたい。


胸の奥がぎゅうっとちぢんでざわざわしていた。


「……そうですか。……もう部屋に戻ってもいいですか?」


心がなくなったみたいにそれだけ言って立ち上がった僕に、佐藤さんが言う。


「圭介くん、またなにかあったら話してね?」


僕ははいと返事をして、追われるように指導員室を出ていった。


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