ライアーライフスタイル

実は「やまむー」には、唯一苦手なものがあった。

「音楽」だ。

歌や合奏、リコーダー。

当時の小学校の音楽教育のすべてにおいて、彼は平均点以下だった。

容姿端麗、スポーツ万能、頭脳明晰。

腹立たしいことに、そんな彼の弱点は「可愛い」と映り、人気に拍車をかけた。

ある日の放課後。

私はその日に使った体操着を教室に忘れて帰っていたことを思い出し、帰路の途中で学校に引き返した。

ブスはすぐに臭い汚いと陰口を叩かれるから、一度使った体操着は必ずその日のうちに持ち帰らないと不安だったのだ。

置いたままにしておくと、性格の悪い女子たちに洗っていない体操着が見つかり、みんなに聞こえるように罵られるかもしれない。

今思えば、汚い言葉を使って下品に笑う彼女たちより私の方がよっぽど清廉であったと思う。

だけど悲しいかな、子供の正義はブスで弱い私ではなく、可愛くて強い彼女たちの方にあるのだ。

< 149 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop