ライアーライフスタイル

実家はバス停から少し歩いて坂を上ったところにある、公営の集合住宅だ。

6棟ある中の3番めの棟の3階。

5人で住むには狭い住宅なので住んでいる間は不満だった。

だけど独り暮らしが長くなった今は、家族との暮らしも楽しかったと思う。

弦川家はもうここに20年以上いるのだが、私と同年代の子供がいる家庭はとっくに別の住処を見つけて出て行ってしまっていた。

山村と一緒になってブスだと言い続けた人たちと出くわしたりしたくないから、都合がいい。

「ただいまー」

久々に実家のにおいに包まれる。

悪いにおいではないが、こんなにも強烈ににおうものなのか。

自分の中で「自宅」が変わってしまったことを実感する。

「おかえりー」

バタバタと出てきたのは大学生の妹だった。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん! 何か気づかない?」

妹は嬉しそうな笑顔で何かを期待している。

私たち姉妹はよく似ていたけれど、妹は私と違って明るくて性格がいい。

「はいはい。気付いてるよ」

嬉しそうに笑みを浮かべた妹は、私と同じく二重の整形手術を受けたようだ。
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