ライアーライフスタイル




月末。

数ある月末作業の中、私は今、請求書と戦っている。

顧客に送る請求書を発行し、仕入れ先から届いた請求書をまとめ、システムに上がっているリストを確認し、過不足や誤りは修正していく。

取引先と金銭にまつわるトラブルは避けたいので、慎重に。

事務仕事は毎月の流れが決まっているからいい。

事前に予定を立て、その通りに実行しさえすれば、余裕を持って職務を果たすことができるし、イレギュラーにも対応しやすい。

ただ、自分だけが余裕を持ったところで、なかなか思い通りには進められないのが現実だ。

例えばこの時期は、事務処理に慣れない新人営業マンのミスに手を焼く。

「小柳くん。この内容じゃ請求書が発行できないんだけど」

「マジっすか? すんません、すぐ直します」

学生気分の抜けない若造にイライラしても仕方がない。

いずれ新田主任が上手く教育してくれるはず。

願いを込めて新田主任に視線を向けると、彼もこちらを見ていた。

私たちの間に色っぽい空気が流れる。

しかしそれに気付く者は誰もいない。

誰も知らない秘密の関係。

彼とはこのままずっと都合のいい関係でありたい。

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