私の片想い事情 【完】

帰り際、「西崎さんのところに帰したくない」と言って私を抱きしめる瀧川君。


私はどう反応していいかわからなくて、そっと彼の背中に腕をまわした。


どうして私なんかがいいんだろう?


中身も外見も平凡女子な私。


しかも他の男を想って6年。


そう問う私に、瀧川君は、「わからなくていいよ。俺が勝手にみなみさんを好きなだけだから」と笑う。


彼は、遠慮しない、と言いながら、恋愛不適合者と言われた私に、やっぱり歩調を合わせてくれて、まだ隼人を想っている私を尊重してくれている。


そんな彼の腕が居心地いいと思ってしまう私はずるい女だ。


瀧川君は、私の首筋に顔を埋め、「少しだけいい?」と言ってキスを落とす。


首筋に這う彼の唇が熱く、頭がぼうっとしてしまう。


熱風が撫でつけるように二人の身体を包む。


密着した部分からじっとりと汗ばんでくるのに、不思議と不快感はなかった。


長い間抱きしめられていたような気がする。


最初こそ抵抗していたけど、徐々に惰性で流される自分。


このまま彼に流されたら楽になれるのかなぁ?


全てを預けてしまってもいいのかなぁ。


どちらからともなく唇が重なりそうになったとき、脳裏に独り寂しく私の作ったビーフシチューを食べている隼人の姿が過る。


その瞬間、私は魔法が解けたようにハッと現実に戻り、瀧川君から身体を離した。





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