私の片想い事情 【完】

困ったような表情をした瀧川君は、「ちょっと焦ったかな?」と寂しそうに笑う。


その顔を見たとき、頭をハンマーで殴られたような衝撃が走った。


ああ、こんな自分が大嫌い!


隼人の傍にいたい、片想いでもいい、と言いながら、毎度簡単に瀧川君に流される弱い自分。


ちょっと言い寄られればふらふら傾いてしまう私は、隼人が軽蔑する浮気女と大差ない。


涙目になって俯く私。


そんな私の手を取り、また心を読んだように瀧川君が優しく語る。


「みなみさんの弱い部分に付け込んでいるのは俺だから。そんな顔しないで?」

「瀧川君……ごめんなさい」


私は、いたたまれなくて頭を下げた。


「謝らないでよ。俺、これからどんどんみなみさんの隙に付け込んでいくから」


そう笑いながら、瀧川君は「おやすみ」と私のおでこにキスを送る。


最終バスがバス停に停車し、私はおでこを前髪で隠すようにして、バスに乗り込んだ。


窓ガラスから瀧川君の姿を見つめる。


街灯の下に立つ彼は、本当にかっこよくて、素敵だった。


風になびくサラサラの髪をかき上げながら、私に手を振る。


私は、その姿に小さく「ごめんね」と呟いて、隼人が待つ家へと帰った。





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