私の片想い事情 【完】
バス停から隼人の家までは、たった数分。
いつもは、駆け足で急ぐこの道。
今日は何だか足取りも重く、ひどく疲れていた。
隼人はまだ起きているかな?
ご飯をしっかり食べるようにメールはしておいたけど、多分食べてないんだろうなぁ。
お鍋を温めることは基より、酷い時はレンジを使うことすら面倒くさがる隼人。
彰人君がいたら、私の代わりにそれくらいしてくれるんだけど、彼は今日から合宿。
隼人の家を視界に捉えると、小学生の子どもを心配する親のように、最後数十メートルの距離を走った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
荒くなる呼吸を整え、額から流れる汗を拭う。
玄関のドアノブに手をかけると、鍵がかかったままだった。
いつもの場所に隠してある合鍵を取ろうと庭に回れば、庭に面したリビングの窓はカーテンが閉じたままで、中は真っ暗だった。
もう寝たのかな?
物音を立てないように家に入ると、しんと静まり返っている。
西崎家の広い玄関には、隼人がいつも履いているスニーカーはなく、スリッパが朝出たときのままの形で置かれていた。