私の片想い事情 【完】

リビングのドアを開くと、やっぱりそこは真っ暗で、誰もいなかった。


電気をつけ、エアコンのスウィッチを入れる。


噴き出す汗に耐えられず、キッチンに行って冷たい水で顔を洗った。


IHコンロに置かれたビーフシチューの鍋は朝のまんま。


「隼人、帰ってないんだ」


私は、主のいない部屋でポツリと呟いた。


何だろう、この虚しさ。


ご飯を食べてくるから遅くなるって隼人にメールしたのは私。


隼人も友達とご飯を食べに行ったのかもしれない。


私がこの家にいる間は、飲みに行くこともなかったから、久しぶりに出かけたかったのかも。


それなら、晩ご飯のメールをしたときに教えてくれればいいのに。


すごく許容量の狭い女のようでバカみたいだけど、隼人のそんな無神経さに、今日はやけに腹が立った。


罪悪感を感じて落ち込んでいた自分が馬鹿みたい。


当の本人は、そんなことすら気づいてない。


どうせ、ケロっとした顔で、「みなみ帰っていたんだ」って帰ってくるのよ、あいつは。





< 196 / 480 >

この作品をシェア

pagetop