私の片想い事情 【完】
リビングのドアを開くと、やっぱりそこは真っ暗で、誰もいなかった。
電気をつけ、エアコンのスウィッチを入れる。
噴き出す汗に耐えられず、キッチンに行って冷たい水で顔を洗った。
IHコンロに置かれたビーフシチューの鍋は朝のまんま。
「隼人、帰ってないんだ」
私は、主のいない部屋でポツリと呟いた。
何だろう、この虚しさ。
ご飯を食べてくるから遅くなるって隼人にメールしたのは私。
隼人も友達とご飯を食べに行ったのかもしれない。
私がこの家にいる間は、飲みに行くこともなかったから、久しぶりに出かけたかったのかも。
それなら、晩ご飯のメールをしたときに教えてくれればいいのに。
すごく許容量の狭い女のようでバカみたいだけど、隼人のそんな無神経さに、今日はやけに腹が立った。
罪悪感を感じて落ち込んでいた自分が馬鹿みたい。
当の本人は、そんなことすら気づいてない。
どうせ、ケロっとした顔で、「みなみ帰っていたんだ」って帰ってくるのよ、あいつは。