私の片想い事情 【完】
夢一つ見ず、熟睡。
寝返りすら打ったのか分からないほど、深い眠りだった。
目が覚めたときは、既に日が傾きかけていて、私は人様のベッドで10時間ぶっ通しで寝てしまったのだ。
泣いて寝て、少しスッキリした私は、大きく鳴るお腹の音に、自分はセンチメンタルになれない体質なんだということに気付いた。
そおっとリビングのドアを開けて亜紀さんの姿を探すけれど、亜紀さんは、キッチンにもバスルームにもいなかった。
「出かけたのかな?」
キッチンカウンターにはコーンフレークとメモが置かれていて、キレイな字で『夕食を作りなさい』と書かれていた。
『ハイ、亜紀さん』とついメモに返事してしまうくらい、威圧感のあるメッセージ。
そして、夕食まではコーンフレークで我慢しろということね。
ハイ、了解です。
私は、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、グラス一杯の水を一気に飲み干した。
流した涙の量はこんなグラス一杯どころじゃなかったけど、乾いた身体を潤してくれる。
冷蔵庫をもう一度開けると、意外にも豊富な食材の量。
料理しない人かと思っていたけど、結構マメに作るんだ、と感心した。