私の片想い事情 【完】
「本来女は順応性の生き物なのよ。より強いオスを求めるのは女の生殖本能。でもそれが危険だと察知すると、次のオスに移れる。そうやって子孫繁栄してきたんだから」
「おっしゃっている意味が難しすぎてわかりません」
「だから、この男がダメなら、次の男。それは別に悪いことじゃないって言っているの」
「だって、心がついていきません」
「そう思い込んいるだけじゃないの?案外瀧川君の胸に飛びこんでみれば違った幸せを見つけられるかもよ」
私はぶんぶんと首を振った。
「だって、あの時、隼人にすごく冷たい目で見られて、隼人を失うかもしれないって思った時、私、絶対に隼人を離したくないって思ったんです。やっぱり隼人じゃなくちゃダメで、それこそ本能が隼人を求めていたんだと思います」
「あんな目にあっても?」
ビールをぐびっと飲みながら亜紀さんは聞いてくる。
「はい。いっそのこと最後までして欲しかったと思う自分もいて。謝られて、拒絶されるくらいなら、酷く扱われた方がよかった……」
箸を握りしめながら、ぐっと涙をこらえる私に、亜紀さんの空手チョップのような非情な突込みがさく裂した。
「いったーーーい!」
この人、今すごい力こめたよね?
首が捥げるかと思った……
「正真正銘のドМね。手がつけられない」
頭をさする私に、亜紀さんはクイっと顎で冷蔵庫を指し、ビールもう一本、と非常に低い声で命令した。
朝のあの優しい声はどこにいったの~