私の片想い事情 【完】
「瀧川君、膝怪我していたの?」
「まあ。高校の時に……」
瀧川君にしては、歯切れの悪い返事が返ってくる。
その話題に触れて欲しくなさそうな彼の表情に、私は、軽はずみに口にしてしまったことを後悔した。
前にも、こんな顔をしたときがあった。
「怪我は治ってますよ。ただ、真さんがうざいだけ」
黙り込む私に、瀧川君がにっこり笑う。
その笑顔は、気にしないでと言ってる。
本当に彼は人の心の機微に敏感だ。
最初は、生意気な嫌ヤツとしか思えなかったけど、本当の彼は、人をよく気遣い、とても優しい。
私が良く知る誰かさんとは多い違いだ。
「みなみさん、真さんの注意が自分から逸れてて、ホッとしていたでしょ?」
「えっ?そ、そういうわけじゃ……」
ホントに人の心を読むのがうまい。
「別にいいですよ。だって、真さん、みなみさんに絡むとベタベタ触るし、おっさとはいえ男でしょ?ムカつく」
「た、瀧川君!」
「誰がおっさんだ?俺はまだ38だ!」
「十分おっさんですよ」
二人のやりとりにオロオロしていると、マネージャーが、いいから来いっ、と瀧川君の首に腕を回し、スタート地点へと彼をを引きずっていった。