私の片想い事情 【完】
「俺、お前に記録抜かれてムカついていたんだよなぁ」
「記録抜かれてって、中学の時の話でしょ?オリンピック強化指定選手にまで選ばれた人と一緒にしないでください!」
「まぁ、堅いことは気にするな。俺はもうオッサンだし?」
「大人げない!」
こんな風に慌てる瀧川君も珍しい。いつも、ひょうひょうとして余裕の表情なのに。
「競争する気なんてありませんよ。もう真剣に泳ぐことなんてありませんし」
「おい、勝負だぞ?」
「一人で真剣になっててください」
瀧川君は、その綺麗な顔を歪め、少し悲しそうに答える。
またこの表情だ。
そう思っていると、マネージャーが真面目な顔をして瀧川君と向かい合った。
「瀧川、いい加減立ち直れ。心が克服できてないと指導なんて無理だぞ?」
「……っ……」
マネージャーの言葉に瀧川君の表情が一気に固くなる。
心の克服?
一体瀧川君に何があったのだろう?
二人の雰囲気に口をはさめないでいると、瀧川君が表情を固くしたまま困ったような表情を見せた。