私の片想い事情 【完】
私はまだ背筋がムズムズするのを感じながら、涙目で亜紀さんを恨めしそうに睨んだ。
「もう、やめてくたださいね?」
「今日は、ね」
「今日だけじゃなくて……」
「みなみ、そんな無防備な顔、男に見せちゃダメよ?」
「は?」
「その顔よ、その顔。無垢で鈍感って恐ろしいわ」
亜紀さんは、よくわからないことを口にして、立ち上がった。
「帰るんですか?」
「イケメン君たちは明日になれば会えるし、デートに遅刻しちゃうわ」
私の前を通る亜紀さんに少し警戒しながら、「お疲れ様でした」とペコリと頭を下げた。
亜紀さんはそんな私を横目でチラリと見て、クスクス笑いながら事務所を後にした。