私の片想い事情 【完】

「あの時もそうだったよな?」

「―――え?」

「あの女が現れたとき。寝不足でズタボロになって俺を探してくれて、泣き叫んで離さないってしがみつかれて」


は、恥ずかしい。


あの時の自分の姿を思い出し、ますます赤面してしまう。


「でも、救われた。俺って案外幸せ者じゃん、って思えてさ」


でも、あの日からだ。隼人が私を遠ざけるようになったのは。それを隼人に伝えると、隼人はまた罰が悪そうに視線を外した。


「あの件以来、増々みなみを手放すことができなくなった。でも、同時に失う恐さも半端なかった。最低だよな?友達として傍にいさせるように仕向けて、ずっとみなみのことを縛っていたんだ。自分はみなみの気持ちに応えることができないくせに、他の男に目が移らないようにしていた」

「そう、なの?」


私は、隼人のことしか眼中になかったから、そんなことを言われてもピンとこなかった。


「ああ。でも、いきなりカズが現れて―――」

「瀧川君?」

「そう。カズとみなみがキスしているところを見て、嫉妬とか不快感より、裏切られたって気持ちが大きくて。勝手だろ?みなみを突き放しておいて、それでも自分のことを好きでいて欲しかったんだ」

「で、でも、私は、キスはされたけど、色々アプローチかけられたけど、気持ちは揺らがなかったよ」


ちょっとグラついたけど、という言葉はあえて飲み込んだ。




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