私の片想い事情 【完】
私は、押し寄せる快楽の波に飲み込まれそうになりながらも、身体を弛緩させて意識をつなぎとめた。
お風呂場で気を失ったりなんかしたら、恥ずかしくてもう西崎家にいられない。それこそ、荷物をまとめてアパートに帰ってやる!
でも―――
隼人は、そんなことおかまいなしに、私を翻弄する。
「や、や、ああ。はや、と……も、無理……」
「何が無理?こんなに気持ち良さそうなのに。これじゃあ、お仕置きにならないな」
何て勝手な言い分。
そもそも私は何のお仕置きかもよく分かっていないのに。
でもそれは口が裂けても言ってはいけないことぐらい、思考能力のない頭でも理解できた。
と、とりあえず、大人しくしたがっておこう、そう本能が告げる。
「わかったから……はぁん……ごめんな、さい。もう、おね、が、い……」
指だけで何度も高みに押し上げられながら、それと同じくらい謝罪の言葉を口にした。
まるでバカの一つ覚えのように喘ぎ声と一緒に漏れる、ごめんなさい。
ああ、意識が朦朧とする。
どうしよう。今更ながら気付いたけど、キッチンで冷しゃぶを作っている途中だった。
キャベツの千切りどうしたっけ?
「は、やと……ご飯、つくらなきゃ……」
途切れ千切れになる意識を繋ぎ止めながら、隼人の手から逃れる口実を探す私。
「晩メシはいらない。みなみだけを頂くから」
何だ、その一昔前の新婚カップルのような台詞は?と思っていると、それは冗談ではないことが次の瞬間に証明された。