私の片想い事情 【完】
気付いたら、俺は夜の街を彷徨っていた。
飲み屋で酔いつぶれ、女の元を転々とする。
苦しい、助けてくれ―――
誰か―――
夜中に幾度となく目が覚めた。
汗だくになり、夜中の3時に冷たいシャワーを浴び続ける。
誰もが賛美するその整った顔が、醜く歪む。
鏡に映るあの女そっくりのもう一人の自分。
それを抑える為に、うっぷんを晴らすように俺は女を抱き続けた。
性欲処理でしかなかった。
顔と名前が一致しないことなんてザラで、ヤッている最中ですら、快楽を与えてくれている極上の女が欲に塗れた醜女にしか見えなかった。
そして、俺の下で淫らに喘ぐ女が言う。
「お前は誰からも愛されない」
違う、と言いたいのに、言葉が出てこない。
「お前は、誰も愛せない」
女は愉悦に蕩けた顔であざ笑う。
違う。
違う。
俺は―――
暗闇に呑まれそうになった刹那、引き揚げてくれる手があった。
それは、とても温かく、心地良かった。