私の片想い事情 【完】
それからというもの、俺はみなみに好意を持つ男たちを次々に牽制した。
そして、相変わらずみなみを傍に縛り付け、静香さんまで利用して、みなみが俺に依存するように仕向けた。
そんな回りくどいことをしなくても、一言「みなみが好きだ」そう言えば、みなみは俺に全てをくれるのはわかっていた。
俺が心の底で切望するものも、全てを―――
それもで、俺はその一歩が踏み出せないでいた。
みなみを抱いた瞬間、あの嫌悪感に襲われたら―――
みなみも、あの女のようになったら、そう思うと、俺はいいようのない不安に駆られ、みなみからわざと距離を取った。
そんな時、あの女が現れた。
あの残像のまま、綺麗に化粧をした顔で、「隼人を頂戴」と艶然と微笑んだ。
蘇る記憶とこみ上げる吐き気。
そして諸刃の刃のように、吐き出された言葉―――
「あなたは愛されずに産まれた子どもよ。そして、あの家には愛され、望まれた子どもがいる」
薄々気づいていた。
親父とこの女の間に愛などなかったことに。
俺もいい大人だ。今更親の愛が欲しいなんて稚拙なことは思わない。
大人の事情というものも理解できる。
だが、実の母親に、自分を捨てた女に面と向かってそう言われると、まるで存在自体を否定されたような気がした。