英国喜劇リコレクション
「どうも、これが性に合ってるみたいなんだよな。さっきはじめて撃ったけど、すんなりいったし」
フム…と考え込んでユノ。
「じゃあ、ちょっと見てろよ?」
「?」
エルヴィスは手の中の銃を、夜会に乗ってきた馬車に照準を定めた。
ガゥン!──ッ!
弾はまっすぐに荷台の後ろ側に描かれた王室の紋章のど真ん中を撃ち抜いた。
これにはユノも感嘆を示した。
「見事だ」
「だろ? つか、何か聞こえなかった?」
「…私が調べておく。主は、夜会に戻るといい」
そうか、と返事を返して颯爽とエルヴィスは屋敷の階段を上っていった。
ユノは馬車の戸を開き中を覗きこむ。
「…これは、」
中にいたのは末の王子・ディゼル。
座席から見えない位置に隠れていたようだが、白目を剥いて泡を吹いていた。
兄への仕返しに驚かすつもりで乗り込んだのだが、途中で眠ってしまったようだ。
目を覚まして混乱していたところへエルヴィスの銃弾。
位置からして、ほんの鼻先。
「さぞ、恐ろしい思いをしただろう…」
そして、ディゼルのトラウマがまたひとつ。