理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
翌日、会社のロッカールームで着替えていると…

「おはよう、彩。
なんだか機嫌いいじゃない?」

マキ先輩に声をかけられた。


私達が勤めているのは、サプリメントやミネラルウォーターを販売する健康食品会社。


私はそこで、管理栄養士とサプリメントアドバイザーとして、食べ物の効果的な組み合わせや、摂り方を紹介している。


マキ先輩は、お客様相談室勤務で…
まぁ、平たくいえば、苦情処理係かな。


でも、新人の頃からずっと…
私の言葉足らずで、気分を害したお客様の対応や、アドバイスをしてくれたり…

時には叱ったり、励ましてくれたり…

呑みながら、愚痴を聞いてくれたりと…

頭の上がらない存在だし、心から信頼と尊敬のできる先輩だ。


「マキ先輩、おはようございます。

昨日、先輩とランチした後、どうしても京都に行きたくなっちゃって…
それで、彼氏に話してみたら『良いよ』って!

まぁ、夏の舞台が終わったらなんですけどね」

テヘヘと、はにかみながら答えると…

「良かったじゃない。

私は、『オンナの磨く一人の時間の楽しみ方』を、アドバイスしたつもりだったけど…
まぁ、せっかくだから楽しんでらっしゃいよ」

マキ先輩が肩をすくめながら、魅力的なウィンクをくれる。


「はいっ!

それで…
マキ先輩のオススメの場所とか、お店とか、ルートとか、宿泊先とか、プランとか…」

興奮気味にまくし立てると、

「私は、旅行プランナーじゃないわよ!」

ピンと、鼻先を弾かれる。


「いひゃ~い。
ずびばせ~ん」

思わず鼻を押さえながらそう言うと、

「昼休みになら、社食で聞いてあげるわ。
プランナー料に奢って貰うわよ」

背中をぽんっと叩きながら、ロッカールームを出るマキ先輩の背中に向かって、

「よろしくお願いしま~す」

と、ブンブンと手を振って見送った。
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