理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
結局…

満たされたフリをした後ろめたさから、貴重品の入った引き出しを開け、5万円を洋介に渡した。


「サンキュ!
分かってくれて嬉しいよ」

洋介のその笑顔に、機嫌が直ったコトにホッとする。


『殴られずに済んだ』

と、そんなコトに安心してしまう、自分に違和感を感じながら。


「公演には、絶対に来いよな。
差し入れ持って。

みんな毎回、彩の差し入れ楽しみにしてるんだぜ」

ニコニコと上機嫌で私を抱き寄せ、クシャクシャと頭を撫でる仕草に…

昔のままの洋介を感じて、安堵感から頬が緩む。


それに、大好きな料理の腕を褒められるのは、嬉しかった。


差し入れ、何にしようかな?

お重に詰めたお弁当 ?

それとも、甘い焼き菓子?

考えるだけで、ワクワクしてくる。


その後、シャワーを浴びて、ベッドに入る頃には、頭の中は差し入れのコトでいっぱいで…

つまらない嘘のことなんか、すっかり忘れて、幸せな眠りにつくことが出来た。
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