理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
20分程で到着したイッセイは、エントランスで待つ私に笑顔を向けて駆け寄り…

「大丈夫…か?」

と、せっかくのその笑顔を曇らせながら、私の顔を除きこんだ。


『待った?』ではなく、『大丈夫?』と尋ねられたのは、先程のお兄さんの電話を意識してのコトなんだと感じ、さりげない気遣いに嬉しさを感じつつも…

そんな風に気を遣わせているコトが、申し訳なくなってきてしまって…

「うん、大丈夫。
でも、京都の夏がこんなに暑いなんて、びっくり。
九州より暑いかも」

なんて、何にも気づいていないフリをした。


「ああ、せやな…
京都はすり鉢状の地形やから、夏はうだるほど暑うて、冬は逆に寒さが厳しなるんや」

お兄さんのコトを、おくびにも出さない私の答えに拍子抜けした様子のイッセイだったけれど、直ぐに表情を切り替えてそう説明してくれた。


「アヤは、九州出身なん?」

「うん、そうだよ。

今住んでるのは福岡だけど、実家は鹿児島なんだ。
だから、暑さには強いつもりでいたんだけど…

ん~…やっぱ、鹿児島より暑いかも」

そう言って、エヘヘと苦笑いすると…

「ほな、お昼はあっさりしたモンでも食べに行こか?」

イッセイの提案に、急激におなかが空くのを感じる。


「うん、楽しみ」

嬉しさと楽しみなのとで、ニヤけている私の肩をスッと抱いたイッセイは…

駐車場へと案内して、助手席のドアを開けて乗せてくれた。


こんな風にエスコートされるなんて、生まれて初めての経験で…

っていうか、それ以前に…

そもそも男の人の運転する車に乗るのは、お父さんか、会社の公用車くらいの経験しかない私。


二人しかいない空間に緊張して…

縫いつけられた様に、シートに座って、微動だに出来ない。


運転席に乗り込んだイッセイが、車のエンジンをかけ…

ジッとしたまま微動だにしない私に、覆い被さるようにして、シートベルトに手を伸ばして締めてくれる。


「…ありがとう」

近すぎる距離にドキドキと脈打つ胸を、押さえ込もうと、お礼を言うと…

チュッと軽い、不意打ちキスが降ってきて…


「緊張してんの?
か~わいい」


と、からかうように笑った。
< 72 / 151 >

この作品をシェア

pagetop