理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
イッセイは、自分のシートベルトを締め終えると…

「はい」

と言いながら、左手の掌を上に向けて、ジャンケンのパー状態に開いてみせる。


「?」

何のコトだか分からないまま、その掌を見つめていると…

「ほら、早う。

このままやったら車、出されへんやろ?
せやから早う右手乗せて」

急かすようにイッセイに言われ、慌てて右手を重ねる。


すると…

まるで恋人繋ぎの様に、私の指と指の間にイッセイの、長くてキレイなと指が絡みついて…

握りしめたまま、車が走り出す。


「えっ!?
何、コレ!?」

頭に?がいっぱいの私に、ニヤリと笑ったイッセイが…

「ただ触れてたいだけや」

と、ペロリと舌を出した。


は……恥ずかしいっ!!


赤くなる顔を背けて…

「ヤダ。して」

そう抵抗の言葉を口にして、繋がれた手を引っ込めようとするも…

「嫌や、離せへんで。
暴れると危ないから、ジッとしとき」

ギュッと強く、握られる。


「…こんなの騙し討ちじゃん。
離してよ」

納得いかないまま、口を尖らせて、抗議を続けると…

「そない嫌がられるんもかなんなぁ…」

少しだけ寂しそうなイッセイの声色と、握られた手の力が弛んだコトに感じる寂しさに…

ちょっと言い過ぎたかなと反省して、
『やっぱり、このまま…』
そう訂正しようと、運転席にそっと顔を向ける。


と…

「ほな、離すさかい、代わりに信号で止まる度にキスしてな?」

タイミングを計ったような、イッセイのビックリ発言に、

「ヤダッ!!」

思わず大きな声で否定したのに、

「えっ?ヤダ?

それって…
『手ェは離さへんけど、キスもしたい』
ゆうコト?」

なんて、勝手な解釈をする。


「ちが~う!!」

ブンブンと首を横に振ると…

「ほぉら、一つ目の信号が見えてきたで。

丁度、赤みたいやし、楽しみにしとこっ」

楽しそうなイッセイに相反して、緊張感が高まる私。






信号機までの数メートル。


しばしの沈黙を経て、意を決して勢いよく運転席へ顔を上げると…

「あぁ~、残念。
青に変わってしもた」

残念そうどころか、ニヤリと悪い笑顔のイッセイは、絶対に私で遊んでる!!


「もう、知らない!」

プイッっと、窓の外に視線を向ける私に…

「そない残念がってくれて嬉しいなぁ。
ほな後で、信号機の数だけまとめてチューしよな」

カラカラと、楽しそうに笑いながら言った。
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