中指斬残、捌断ち儀


「情けじゃなくて……その、藤馬さんは僕のために色々言ってくれるから……」


言い方はきついが、逆にきつい方が分かりやすい部分もある。


五十鈴さんが優しく接してくれるとしたら、藤馬さんは厳しく僕のために何かをしてくれた。


人間らしからないと、感情がないと嘲り罵る口振りでさえ『悔しかったら出してみろ』と僕に怒りや悲しみの後押しをしてくれているような――嫌なことは嫌と歯向かえと、藤馬さんはずっと言い聞かせてくれたんだと思う。


あくまでもこれは僕の憶測で、藤馬さんは本当にただ僕を罵りたいだけにせよ、実際に僕は叫べた。


僕が笑顔にならないと悩んだ五十鈴さんの前で、あんな場面だからこそ叫べた。


『五十鈴さんが家族で良かった』と、自分の感情を出せた。


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