中指斬残、捌断ち儀



「っ――」


五十鈴さんから距離を取る。後退する身はバランス取れず、あわや転倒しそうになったが――何かに支えられた。


後ろにでも壁があったか、しかしながら何もない。言わずもがな、僕を守るものがますますもって危険回避の体を成してきたということか。


「な、どう……」


突飛な行動に五十鈴さんは足を前に出したが、僕は後ろに出す。


明らかなる距離の空け方は拒絶の表れでしかないけど――違う違う。


「ちがうっ」


なんで拒絶なんかしているんだ、僕は……!


五十鈴さんだ、五十鈴さんなんだ。怖いだなんて怯えるだなんて、馬鹿なことを考えるな。


過剰反応なんだ、要は。間違っている。五十鈴さんの想い(優しさ)を壊したくないから、騙すことが嫌で、騙され続けられてしまう彼女があまりにも不憫で、僕なんかに付き添ってくれる――本当のことを何一つ言えない僕に、本心(優しさ)のみで向き合う人があまりにも、“違いすぎて”。


< 786 / 1,127 >

この作品をシェア

pagetop