Line ~何時ものセリフで~
それは雅人も同じだった…

やっと触れられたのに、望んだこと
なのに
止めどなく流れる涙を手で覆っている
私の手の甲に、ポタポタと雫が落ちてきた

「雅人…」

目の前の雅人が苦しげに顔を歪め
泣いていた

「ごめん…、ごめん…」

私になのか、彼女になのか

私達はそっと離れ、私は雅人に背を向け
服を整えると立ち上がり

「ま…、社長、明日からの出張気を付けて行ってきてください」

そう言って部屋を出た
雅人の顔を見ることなく…

それが私の精一杯だったから


結局私に出来ることなんて何にも
なかった


この時、僅かに空いたドアの向こうの
人影に気付かずにいた。
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