-Vermillion-



――漆黒の闇の中を、
  一筋の光が照らしている。
  その光の先で黒いアゲハ蝶が、
  道案内をするかの様に舞う。
  そっと手を伸ばすと
  蝶は指先に止まり、
  ゆっくりと羽を動かした。  

  不安なのですか、我が主様よ。
  ならば私は、
  貴女をお支えするのみ……――



-AVRIL 23 (Lun)-



鳴り続けるアラーム音を止めて、

眠い目を擦りながら

リビングに降りる。
 

(先週より続いている
 連続殺人事件は、
 無差別殺人の可能性が高いと見て、
 警察は市民に
 厳重注意を呼び掛けています。
 夜間の外出は控え――)


「朱乃おはよ。今日はパンでいいか?」

「うん、ありがとう…」


(今回の事件についてはまだ、
 有力な情報が出ていないと――)


「世間は事件一色だな。
 今まで平和だった分、尚更か。」

「そうだね…」

 
有力な情報は出ていない……

やはり警察は、

私の言った事を当てにしてないのだ。

せっかく勇気を振り絞って

警察まで行ったのに……


やり切れない気持ちで家を出た。


重たい足取りで学校に着くと、

加奈が下駄箱の前で待っていた。

「加奈、お早う…」

「おはよ朱乃。あんた大丈夫?」

「何が…?」

「急に倒れたんだって?」

「どうして、その事…?」

「昨日の朝朱乃の家行ったら、
 真朱に追い返されてさ。」

「そっか…でも、もう、大丈夫…」

「本当?
 ならいいんだけど。
 あんまり心配させないでよ?」

「ごめんね、ありがと…」

< 15 / 101 >

この作品をシェア

pagetop