state of LOVE
「セナに検査受けさしてこいや」
「はい?」
「ちゃんと調べてもろて大丈夫そうやったら、子供作ってええから」
「いやいや。結婚が先でしょ?順序良くいきましょうよ」
「さっさと結婚して孫作ってくれ。生活は俺が何とかしたるから」

どんな自分勝手な父親だよ。と、メーシーが相手だったならば投げつけていたに違いない。けれど、相手は落胆気味の義理の父で。可哀相に…と、喉に留めたままポンッと肩を叩くだけに留めた。

「ちーちゃんが退院したら、暫くそっちで暮らしていいですか?」
「おぉ…ええけど」
「ホントはセナ一人で行かせるつもりだったんですけど、予定外の人員が増えたんで俺も」
「あぁ…」
「陽彩が退院するまでの間、美緒の面倒ちーちゃんにお願いできますか?マリーじゃ心許無いんで」
「せやな。アイツは子育てなんかしたことないやろうしな」

やはり皆わかっているのか。と、我が母ながら呆れてしまう。

悪い人ではないのだ。ただ、自由奔放な女王様なだけ。世間はそれを「ワガママ」だとか「自己中心的」だとか言うけれど、我が家にはそれを「可愛い」と評して受け入れ、尚且つ当然の如くそれを中心に回してしまう敏腕な人物がいるので、さして不都合はなかったように思う。

子供達の愛情不足はさておいて。

「陽彩、ハルさんソックリですよね」
「おぉ、そうかもな」
「俺達の子は…」

どっちに似たとしても、きっとこの瞳は受け継ぐのだろう。

この不安を誰かにぶちまけたいところなのだけれど、生憎俺はそんなキャラではなくて。語らずとも察してくれるだろうハルさんを前に、中途半端に言葉を止めて願ってみる。

「目の色なんかで人間性は変わらんからな」
「捻くれて育つかもしれないですけどね」
「お前みたいに?」
「俺?俺は素直ですよ。麻理子の息子ですから」
「メーシーに瓜二つのくせによぉ言うわ」
「そんな似てますかね?」
「おぉ。世界が遺伝子の恐ろしさに震撼するくらいな」
「相当ですね」

あははっ。と笑うと、ポンッと頭が撫でられる。こうしている時は、ただの子供でいられるような気がする。

だから、ハルさんとメーシーのことが好きなのだ。
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