state of LOVE
「私はもう帰るけど…気を付けた方がいいわよ」
「何に対してですか?」
「借金取り。クスリに相当注ぎ込んでたみたい」
「あー…それは気を付けた方がいいですね。ご忠告ありがとうございます」
「一人暮らし?」
「いえ。妻がおります」
「あらっ!若いのに」

そう言ったその人の表情は、明らかに残念そうで。こんな若造相手に何を期待してたんだか…と呆れたため息を呑み込み、それでも尚、俺は笑顔を作る。こうゆうところは、親子でソックリだと思う。

勿論、女王様ではない方と。

「一つ、僕からも質問させていただいても良いですか?」
「ええ。なぁに?」
「ユリさん、ご身内は?」
「いないんじゃない?」
「ご存じ無いですか?」
「んー…施設育ちだって話だから。自分が産んだ子も施設にやっちゃったらしいし」
「え?」
「え?」

だったら今聖奈が抱いている子は誰の子なんだよ。と、喉元まで出かかった言葉を呑み込む。話す相手は厳選する。これは人付き合いの鉄則だ。

「仲の良かった方とかはいらっしゃらないですか?」
「なぁにー?ユリちゃんのことが気になる?」
「少し」

困ったように笑うと、大概の女はそれで許してくれる。
勿論、「聖奈と志保さん、レベッカ以外は」という絶対条件がつくけれど。

「残念だけどいないわねー。あの子、店でも浮いてたから。私は嫌いじゃなかったのよ?でも、ちょっと変わった子だったから」
「そうですか」
「残念そうねー。付き合ってた男なら知ってるわよ。知りたい?」
「出来れば」

言い終わる前にペタリと体を寄せられ、これはまずい…と少し身を引く。飛び出してくるな。と思った時には、既に聖奈はこちらに向かって駆けて来ていた。
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