愛の囁きを[短篇]
「ふぇ…」
好きだと気付いて、
気持ちを伝えることもできず。
私は今日始めて気付いた恋で
今日、初めて泣いた。
…壱、壱、壱。
結局その日。
壱から連絡が来ることはなかった。
「穂波!6時!壱君来る前に起きなさい!」
「…もう起きてるよ。」
ドアの前で怒鳴っていた母が驚いた顔をして私を見る。
「あら、珍しい。」
「たまにはね…。もう学校行くから。」
結局、眠ることが出来ず、朝を迎えた私。
壱と登校するなんて気まずすぎる。
母も驚くくらい早くに支度を済ませ、家を出たのは7時。
「この時間なら会わないよね。」
すがすがしい空の下、どんよりとした気持ちを抱えたまま私は学校に向って歩き始めた。
いつも隣に居た存在。
いつも持たれたいた鞄。
いつも笑っていた貴方。
あぁ、こんなにも大きな存在だったんだな。
初めて1人で登校して気がついた。
位置の存在の大きさについて。