愛の囁きを[短篇]
学校でも壱に会わないように気をつけた。
教室からあまり出ないで、壱の姿を確認したらすぐに反対方向へと猛ダッシュで逃げた。
「穂波、何かあった?」
「…ううん。何にもないよ。」
私の異様な態度に佐奈も気がついたのか怪訝な顔で私を見ていた。
何とか逃げ切った私。
放課後もチャイムと同時に教室を出て、家まで走って帰った。
ズキズキする心。
こんな痛み、私は知らない。
…壱。
もう、会わない。
初めてした恋。
それは呆気なく、終わってしまったのだ。
「…」
壱、もしかしたら私は幼稚園の頃からずっと貴方が好きだったのかもしれない。
意地悪で
それでもってたまに優しくて。
気付かない間に私は恋をしていたのかもしれない。
でも、でもね。
ただの壱にとって都合の良い女になりたくない。
だから、もう会わない。
それが私の決断。