pierce,prince
葵の呆れたような声は
怒鳴られるよりも
あたしに辛く響いてく。
「正直、あんなタオルいらねえ」
やっぱり‥
───そうだよね。
いらないならいらないって
最初から言ってくれればよかった
正直に言うように
請うたのはあたし。
でもいざ聞いてみれば、
一度偽りでも感謝の気持ちを
受けた心にはつらすぎて。
「でも…」
聞かなきゃよかっただなんて
思うあたしの心は、ずるい。
ずるすぎる───‥。
「それは、海以外から
もらった場合の話、だ。」
─────‥?
「俺はっ───‥
海からのプレゼントなら…
どんなものだって
うれしくてうれしくて
たまんねーんだよ…!」
あたしからの、
プレゼントなら…?
「ガキだと笑いたきゃ、笑え。
海がくれたもんなら、
なんだってほしいし、
大切なものになんだよ…!」
『…葵…、意味わかんないよ…』
泣きたくないのに、
目からは涙が流れ落ちた。
ここは泣くとこじゃない、
葵の前で泣きたくないとは思うが
───‥止められない。