pierce,prince



「今年は…海からじゃ
だめだったんだよ。」



そう言った葵は、また
あたしを無理矢理に
ベッドに座らせ、望遠鏡の前へ…



「…今年の、ほしかったもの。」



葵は左腕であたしを
後ろから抱き締めるようにすると
右手で望遠鏡に手を伸ばした。



「…望遠鏡。」



『…ッ…あたしじゃ望遠鏡
買えないとでも思ったワケ?』



辛いのに、苦しいのに、
涙が出るほどに
痛くてどうしようもないの


葵に抱き締められた
この胸が───‥




「そうじゃねえよ。」



葵の声に怒気が混じる。



「お前、いい加減にしろ。」



冷たくあしらわれた言葉に
カラダの熱が冷めてゆく



葵に抱き締められたままなのに
熱は、耳からの衝動に冷まされる



そうだよね、そうだよ。

こんな聞き分けなくて
うざったい女、
いくら葵でも嫌になるよね。



「───もういい。
…正直に、言うから。」



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