女の隙間、男の作為

恋愛感情というには大袈裟で、仲間意識と呼ぶには言い訳くさくて、エゴと表すのがいちばん近い気がする。
それは当然というべきなのか重ねている行為と同じ呼び名なわけで。

そして同時にいちばんあたしらしい感情だと思った。

自分がいちばんエゴイスティックになれる相手がこの男ならば。
あたしはやっぱり利己的にすべてを進めなくてはいけないのだろう。

「たまにはあんたの好きにしていいよ」

あんたも利己的にあたしを扱えばいい。
その間にあたしはもっと自分勝手になれるだろう。

「へぇ、本当に?
途中で嫌って言ったりしない?」

「わかんない」

「カノって正直でいいよな」


“そこがすきなんだけど”


そこでそうくるか。
すきにすればいいと言ったのはあくまで行為のことなのに、言葉で身勝手になるなんて間違いなく卑怯だ。

ならば、あたしもどこまでも卑怯でワガママになってしまおう。


岡野麻依子は岡野麻依子らしく。

退路も進路も自分本位に決めるしかない。




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