女の隙間、男の作為
「お、松岡。カノを口説くとはチャレンジャーだな」

「わかってるなら邪魔しないでくださいよー。イイ感じだったのに」

「なってないなってない。ハイ、部長。飲んでー」

御子柴が置いていったピッチャーから温くなったビールを空いたグラスに注ぐ。
どうせ味もわからなくなっている相手だからコレで良し。

「カノは?」

「はいはい。カノちゃんも飲みますよー」

“ハイ、カンパイ”

その間も松岡の手はあたしの腰に添えられたままで離れようとはしない。
まるで彼氏気取りの扱いに反抗心がメラメラと芽生えるけども、わざわざヒステリックになるほどのことでもないから据え置く。
それになにより今日は金曜の夜だ。
会費3000円の元を取るにはもう飲むしかない。

「松岡さんがあたしの面倒見てくれるみたいなので、ガンガン飲みますー!
御子柴ー!焼酎ボトルでいれなさい!」

そうだそうだ行け行けと囃したてるおじさま連中は水だろうと酒だろうと区別もつかなくなりつつあるけれど貴重な財源なので丁重にお相手をする。
さすが、あたし。営業部の鏡!(自画自賛)


営業畑に勝手に種を植えられて6年。
お酒での失敗なんてそれこそ両手じゃ足りないほど繰り返してるし瑞帆に呆れられたことも片手じゃ知れず。

それでもチープな月曜ドラマやハー●クインでネタになるような“ベタな”失敗だけはしたことはなかった。

“カノは酔っ払っていても何気に理性があってガードが固い”と評価(?)されるくらいそこにだけは自信があった。

それなのに。
それなのに。

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